柳沢健「1984年のUWF」を読んで思ったこと。

柳沢健氏の著作はあまり好みでなかったのですが、
話題になっていたので「1984年のUWF」を一気に読破。

中井祐樹とほぼ同世代だし、
全てがリアル・タイムだったので、とても面白かった。

UWFが登場した時は、素直に佐山の復帰が嬉しかった。
タイガー・マスクが引退して、つまらなかったので、
(実際、新日の視聴率がガタ落ちしていた)
佐山のザ・タイガー見たさにビデオを借りた。
ただ、飛ばないタイガーは面白くなかったし、
ストーリー性や因縁のない競技的プロレスに全く燃えなかった。
ひたすら暗い旧UWFで佐山が試合やるより、
華やかな新日に復帰してほしかった。

ただ、当時は藤原門下生に幻想があったし、
旧来のプロレスに無い「キック」もあった。
とても旧来のプロレスラーは勝てないだろうと思っていた。
(実際、後、新日復帰後は前田はガチで外人に入れていたし)。
素人中学・高校生ファンにアマレスや柔道の強さなんか分かるわけなく、
「長州力より藤原、前田が強い」と思い込んでいた。
新日本での彼らは、かつて猪木が持っていた、
危険(キラー)な分子をはらんでいた
プロレス内での前田は最高のカリスマだった。

ただ残念だったのがその後の新生UWF。
かつての因縁もストーリー性もない競技プロレスへ逆戻り。
同門内での小競り合いに、
丁度、極真出身のアンディ・フグやミッシェル・ウェーデル、
ロブ・カーマンやドン・中谷・ニールセンなどの
キック・ボクシングも脚光を浴びだしていたため、
世界には凄い選手がいるだろうに、
仲間内でチマチマ闘って「最強」は無いだろうと。
後に異種格闘技に手を出したが、
そのころ、新日本、猪木が連れてきたソ連「レッドブル軍団」の
体の厚みや身体能力に驚いていて、
世界は広いと思い始めたため、
UWFの蹴り主体の格闘家たちに対しグランドに引き込み勝ってはいたけど、
もっと肉体の強さと技を持つレッドブル軍団の方が絶対に強いと思っていた。

あとアマチュアあがりのソ連レスラーを、
いきなり旧来のショーマン派のアメリカ人レスラーと戦わせたりと、
猪木の仕掛けの刺激の強いこと。
「ハシミコフvsビガロ」ほど興奮した試合はない。
これが後にプライドに繋がったと思っている。

前田のリングスは結果的に良かった。
オランダ、ロシア、グルジア、ブラジルなどから強者たちを連れてきて、
ワールド・ワイドな大会を展開したし。

ようするに、試合内容はプロレスであれ、ガチであれ、
昔のプロレスにあった「まだ見ぬ強豪」にワクワクしていた自分に気づいた。

その後のプライドやK-1も「まだ見ぬ強豪」が次々と現れて、
「これとこれが闘ったらどちらが勝つのだろう」と思わせる
血の気が騒ぐストーリーが大好きであって、
UWFのスタイル云々でなく、
内輪同士で高め合う「青春スタイル」が嫌いだったのが、
僕がUWFにはまらなかった理由だと思う。
UWFには猪木のいう「闘い」が薄かった。

ついでに、巻末の「[特別付録]1981年のタイガーマスク」についても一言。
今の日本のプロレスの動きは凄いが、
佐山タイガー以上のアクロバットな動きをしても説得力がない。
佐山タイガーの空中殺法は猪木の教えを忠実に守り、
相手にダメージを与える技だった。
ただ、アクロバットな技を見るならルチャ・リブレが最高だ。

この本でようやく柳沢健氏と歩調が合った気がする。

追伸:「週刊プロレス」のカラー・ページの横のモノクロ1ぺージに載った、
「第一回UFCのトーナメント結果」の記事はいまだに忘れられない。
パンクラスでガチ最強と言われていたシャムロックと、
喧嘩家最強のゴルドーが負けていたこと。
ボクサーや力士も出場していた、本当の喧嘩ルールの中で勝利した「グレイシー柔術」。
あの1ページから何もかも始まった気がする。
柳沢健氏にはぜひ「1993年のUFC」を書いてもらいたい。
(海外が題材だけに難しいだろうけど)

そう考えると「VTJ前夜の中井祐樹」も読みたくなった。
でも、作者の増田俊也は反プロレス派なので、
「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」は断念した経緯もある。

しかしながら柳沢健、増田俊也、
プロレス村の人たちでない作品ばかりが話題になる。
どちらも好きでもないのに、読みたいと思わせる二人の着眼点と取材力は、
残念ながら、プロレス・マニアの僕が見ても、
これらの力量は今のプロレス村ライターにはない。
ただ、プロレスが外部に荒らされて、商売道具にされてるのが悔しい。

追伸2
話題になる本はそれだけのことはある。
作者が嫌いでも、
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